ひさしぶり

金髪をピンクのゴムで高く束ねたおねぇさんが

こっちよ と案内してくれたのは芝生の庭で

巨大な木製の船が出てきて回転しているところだった

年季の入ったブルーグレイのキャップを被った短い銀髪で

紺色のパーカー 帽子と同じブルーグレイの瞳で優しく微笑むの彼女のお父さんが 船を管理している

あ ほら あれ ちょっとヤバイかも と 彼女が指差す方を見ると

船の先端からジョボジョボと水のような物が垂れていた

あ おしっこしちゃったかな と何だかソワソワして まだ回転途中の船の

一番手前の引戸を開けて中を覗くと

先端には茶色い馬がいた

だいじょうぶ 問題ない 馬がいるけど馬もだいじょうぶ と彼女に目で伝えた

ガチャンと大きな音を立てて船が止まった

開けっ放しにした引戸の前に手をついてメリーっと叫ぶけど返事がない

ここじゃなかったのかな こころがひゅうっと縮みそうになった瞬間

奥から慌しい蹄の音と叫び声と共に

メリーが走ってきた

あぁ メリー!!!

でも鳴き方が少しおかしい

すごくさびしい時と痛みや不調があるときが混ざった鳴き方

よく見ると右の骨盤が前にずれていて うまく歩けていない

あぁ メリー 痛いんだね

メリーの右の骨盤は3枚の歯車になっていて

その組合せがチグハグになってしまったのが原因だというのが見えたから

どうやってきちんと入れてあげたらいいか考えつつ

この船にいた方がいいのかなとか考えながら

痛いかもしれないから やさしく撫でていたら

目が覚めた

メリーに触れるのは ほんとうにひさしぶりで

メリーは痛そうだったけど 遅かったじゃんかー!待ってたのに!と言わんばかりでもあった

会えたのがうれしかった

コーヒーを淹れながら

あれはノアの箱船的なものだったのかもしれない と思った

メリーのからだは土に溶けていく

だから いつまでもこの形では会いに来れなくなるからね 来るとすれば

何かしら支障が出てくるよ

でもそれは形のことだから

そろそろ次のいのちになる準備がはじまるよ

いつでもそばにいるんだよ

って

メリーがいってる様に感じた